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天正十六年六月佐竹義重、葦名義広、岩城常隆、二階堂義親、其兵四千餘騎を率ひ出てて安積を侵す時に 公兵を四方に出す纔に數百騎を留むるのみ屈せす進んて之に當る窪田に相持するもの月餘、七月四日、敵将新国上総、我か陣前を過く伊達成実、片倉小十郎と議し其の庶兄片倉藤左衛門をして之を撃たしむ藤左衛門勝に乗して進み遂に敵の圍む所と爲る成実、小十郎等馳せて之を救ふ義重、義広兵を放て大に戦ふ 公又た出てて戦を督す我兵奮戦激闘、怒涛の空を春擣するか如し而して兵寡にして乱撃、時を移す我に利あらさらんとす伊藤肥前重信之を見、速に「武別(ものわかれ)」せしめとす而して我兵一歩を退かす是に於て重信、快馬敵陣を乗割り機を見て兵を収めんとす■毛の馬に打乗り五輪の塔の旗推したてて 公か前を過く威風凛々、毛髪逆に指すの慨あり 公壮とし重信を呼んで曰く我れ兵、寡にして地利あらす進退宜きを得さるへからすと重信、鞍の前輪を押へ一礼して曰く『今日は討死と存し定む心安く思召さるへし』とて打通る 公目送して曰く『戦の法にて左様思はねは勝利は得られぬ者哉』と重信馬を飛はして猛然、敵軍の中に割て入る敵皆な披靡す重信、突て敵背に出つ復た馬首を返へして蹂躙す是に於て敵、鋒を叢めて之を突く重信遂に之に死す我兵力戦、大に敵を破る戦に先つ一日 公老臣を召し宴を賜へて戦を議す重信意気昂然、謂て曰く佐竹葦名の兵、衆と雖も烏合の徒のみ重信一人の力能く之を蹶散するに足ると 公壮とし酒の肴に親ら蟹を取て重信に賜ふ重信辞す且つ曰く蟹は横走の物、臣陣に臨む直進す横走せすと一座歎賞、果して其言の如し此日重信、甲を擐(←?)し「忍の緒」を絶つ是より先き重信の指物、阿吽の梵字を用ゆ此に至り 公謂ひ五輪の塔に改む皆生還を期せさるなり重信死する年時五十有二敵其の忠勇に感し重信か首を指物に包み其屍に甲冑を添ひ人をして之を我に送らしむ全軍其死を惜まさるなし
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人取橋の戦、伊藤肥前、麾下を会し諭して曰く敵来、我寡、勝利覚束なし我に一策あり駄馬に騎して敵陣に乗り人らは勝、期し難きに非らす然るに危道なり之を爲す何如んと衆皆な曰く善し各々好敵手を獲て引組み差違へ以て主公の志を成さんと是に於て肥前か従士三十騎、皆な牝馬に騎して出つ戦合するに及ひ敵、我軍を追て進む肥前牝馬に乗して横さまに之を衝く敵馬奔騰、止めんとして止むる能はす肥前の兵、縦横撃て之を破る
窪田の戦、伊藤肥前奮闘、敵に死す肥前の子七郎重綱、深く父の死を憤り敵を斬て仇を復せんとす翌、『五輪の塔の指小旗』を指し馬を乗り出して敵に近つく敵、其の指物を望見し退縮、敢て出す曰く昨日の『五輪の塔』復た出つと七郎是に於て大音声を揚げて敵を罵り嘲る遂に出てす七郎しつしつと馬を乗り廻して陣屋に還る蓋し敵、七郎か荘志に感し敢て出てさる者と謂ふ
人取橋の戦 公、伊藤肥前重信、富塚近江宗綱、桑折摂津政長を遣し高倉近江と與(←?)に高倉城を守らしむ己にして敵来る雲の如し城西を掠めて過く 公か本陣を衝かんとするなり重信、大に驚き宗綱に謂て曰く敵今ま本陣を衝かんとす本陣兵寡し撃て之を破らすんは大事に及はんと政長近江不可として曰く敵衆我れ寡、寡を以て衆を撃つ譬へは一撮土を以て大川を塞くか如し就れた焉を能せんと重信曰く兵法に謂はすや拙くして速かなるを聞く未た巧みの久しきを見すと速に之を撃つに若かすと政長等曰く我れ寡兵を以て出てゝ戦ふ敵若し之を絶つ魚の水を失ふか如し益々不可なり出てさるに如かすと重信憤然として曰く兵法に謂はすや三軍は気を奪うへし大将は心を奪うへし風の如くに馳せ電の如くに撃ち神出鬼没、敵をして端睨するに遑あらさらしむ必すや敵を拘牽して本陣に近つかさらしむるに足る手を束ねて亡を待つに勝れりと衆、重信か議を賛す即ち出てゝ横さまに敵を衝く勢、霹靂の山獄を搏つか如し敵破れて退く岩城常陸大軍を擁し馳せて之を援ふ重信即ち退て城を保つ既にして常陸、計あるを疑ひ終に軍を退く
伊藤肥前の窪田に死するや國中傳て之を惜まさるなし中にも濱田伊豆等深く之を悼み連歌会を開て之を吊ふ岩城の臣志賀甘釣、風流の士なり時に葦名佐竹の爲めに和を請ひ周旋、我に在り又た来り会す連歌師猪苗代兼如之か辞を作くる文に曰く

去し頃、思はさるに戦出て伊藤肥前、命を君に奉らる其程甘釣齋は常陸の使にて輩の情を和け奉らん爲 伊達の陣に日を送らる安積山の山の井の水手向に添て発句をなと各すゝめ給ひしを浅くは思はぬ事なから多く紛れ打過ぬれは、そのかはりに予つかふまつれと有けるを度々すまひけれともしひて催さるれは、さし當りての六つかしさを遁れんとて後の嘲を忘れ侍りぬ


消還り置はあたなる露もなし      猪苗代兼如
草の花つむ路の朝夕         浜田伊豆景隆
蟲の音に飽ぬ名残の野を分けて    甘釣齋玄湖
月の光を片敷の袖                長安
槇の戸を涼しき儘に鎖さなん      兼如子恕仙
軒端の山に雨過くる暮        大和田筑後忠清
立並ふ松の葉傳ふ風の音     志賀左衛門盛清
やとり定めす鳥や鳴らん       志賀右衛門武清

八人なる者、連歌を假りて追悼の意を表す聞く者、其義を高しとせさるなし
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