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伊藤肥前の窪田に死するや國中傳て之を惜まさるなし中にも濱田伊豆等深く之を悼み連歌会を開て之を吊ふ岩城の臣志賀甘釣、風流の士なり時に葦名佐竹の爲めに和を請ひ周旋、我に在り又た来り会す連歌師猪苗代兼如之か辞を作くる文に曰く

去し頃、思はさるに戦出て伊藤肥前、命を君に奉らる其程甘釣齋は常陸の使にて輩の情を和け奉らん爲 伊達の陣に日を送らる安積山の山の井の水手向に添て発句をなと各すゝめ給ひしを浅くは思はぬ事なから多く紛れ打過ぬれは、そのかはりに予つかふまつれと有けるを度々すまひけれともしひて催さるれは、さし當りての六つかしさを遁れんとて後の嘲を忘れ侍りぬ


消還り置はあたなる露もなし      猪苗代兼如
草の花つむ路の朝夕         浜田伊豆景隆
蟲の音に飽ぬ名残の野を分けて    甘釣齋玄湖
月の光を片敷の袖                長安
槇の戸を涼しき儘に鎖さなん      兼如子恕仙
軒端の山に雨過くる暮        大和田筑後忠清
立並ふ松の葉傳ふ風の音     志賀左衛門盛清
やとり定めす鳥や鳴らん       志賀右衛門武清

八人なる者、連歌を假りて追悼の意を表す聞く者、其義を高しとせさるなし
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