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某の戦、夜 公自ら出てゝ諸営を巡察す偶々茂庭石見、盡間の戦闘に疲れ白綾の『具足下』を纏ひて火の、そはに横臥し鼾聲雷の如し 公視て問はす「矢立」取り出し莞爾として古歌二首を『具足下』の腰の、あたりに書きつけて去る歌に

いかなる事かおもひけん
 ふるき事かきつけ侍ぬ
  わか恋はみ山かくれの
   くさなれやしけさ
  まされとしる人のなき
    いとせめて
      恋しき時は
       むはたまの
  よるのころもを
     かへしてそぬる

『具足下』猶ほ後藤氏に蔵す 公か筆勢雄抜、飛動の勢あり蓋と陣間、劔鉾の気、然らしむるなり


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